たかっちゃんの紙芝居

「たかっちゃん」こと木津川市のお米屋さん塚田高司さんの紙芝居の活動と、所蔵されている紙芝居を紹介します。
また、ご自宅の一室にある昭和のキャラクター文具を集めた「一心堂子供博物館」も紹介しています。

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「たかっちゃんの紙芝居」動画
たかっちゃんインタビュー

晴れの日は公園で 「たかっちゃんの紙芝居」
~自宅倉庫をレトロ文具の「子供博物館」に~

-京都府木津川市の塚田高司さん-

塚田高司さん

「たかっちゃんが来たよ」。公園に子どもたちの歓声が響き、拍子木が鳴ると、紙芝居の始まり始まりです。

昔懐かしい「街頭紙芝居」を演じるのは、京都府木津川市で米穀店を経営する塚田高司 さん。正解なら、水あめなどがもらえる紙芝居クイズも大人気。競うように一斉に、回答の手が上がります。

「すごい、よく分かったね」「もっと元気に、大きな声を出そうよ」。青空の下、紙芝居を介して、対話と交流の輪が広がります。

子どもの笑顔 目の輝き

子どもの頃や学生時代の思い出を聞かせてください。

木津川市立木津小学校の卒業生です。自宅に近い橋のところに、紙芝居屋さんが毎日来ていました。学校から帰ると、ランドセルを放り出して駆け寄って。水あめを食べたり、型抜きをするのが楽しみでした。わくわくしながら、通いましたね。
ところが、2年生か3年生の時から、パタッと来なくなったんです。遊びと言ったら、ビー玉かメンコか紙芝居の時代でしたから。さみしい思いがしました。

明石市の神戸学院大学に進み、S.S.W(スチューデント・オブ・ソーシャルワーカー)というボランティアクラブに所属しました。兵庫県内の過疎地の小学校を回って、人形劇を演じたり、紙芝居や手品を披露したんです。
淡路島の小さな小学校を訪ねた時は、駅まで見送りに来てくれて、「帰らないで」と抱きつかれて。感動しました。どこの学校でも、子どもたちは笑顔で大歓迎。目をらんらんと輝かせて、喜んでくれました。

いつかは、こういうことができればな、とは思いました。でも、大阪の商社に就職した後、父親が体調を崩し、28歳の時に家業を継ぐ決断をしました。それからは仕事に忙殺される毎日。子どもたちのあの笑顔の記憶は、薄れていきました。

54歳で一念発起 紙芝居に挑戦

公園で紙芝居を始めるに至ったのは。

配達で地域を回っていると、公園で遊ぶ子どもたちの姿が見えないのに気が付いたんです。たまに見かけても、ゲーム機を手にして、会話や触れ合いがない。こんなことで、いいのかなと思ったんです。
紙芝居なら、人形劇と違って一人でもできます。よし、昔の夢に挑戦してみようか、と。

2006年の夏、54歳の時でした。店の倉庫を大掃除して「子供博物館」に改装。日曜の午前中だけ、地元の図書館で借りてきたもので紙芝居を始めました。半年ほど続けた頃、大阪市のNPO法人紙芝居文化協会の杉浦貞理事長さんから街頭でやるように勧められ、 07年、初めて地域の公園に出ました。

ミニバイクの荷台に紙芝居を積んで、自信満々で拍子木をたたいたんです。でも、近くに寄って来てくれません。不審者ではと、お母さん方が心配そうに、こちらを見ています。恥ずかしくなって、諦めかけた時期もありました。

そんな1か月ほどを乗り越えると、2人、3人が4人、5人に増え、“たかっちゃんの紙芝居“が口コミで広がっていきました。08年の正月号でしたが、市の広報誌の特集で私が紹介され、お母さん方の信用も得たようです。

当初は週に3日か4日、随時開催していましたが、どの公園は何曜日にと指定しました。ここ5年間ほどは、月曜から日曜まで毎日です。木津川市内の6小学校と精華町の1小学校の校区ごとに、静かで車の乗り入れが少ない公園で、夕方の4時から始めています。
多い日は、100人近くが集まります。私の到着を心待ちにしていますので、お休みは雨の日と盆・正月だけと決めています。

懐かしい文具 おもちゃー子供博物館

子供博物館には、なにが展示されていますか。

明治29(1897)年創業の一心堂という米穀店で、私が4代目になります。文具店も営んでおり、蔵に積んであった段ボール箱に、父親の代からの古い文房具や日用品が大量に眠っていたんです。クレヨン、色鉛筆、塗り絵、ノート、筆箱などには、オバQ、トッポ・ジージョ、巨人の星、鉄腕アトム、ジャングル大帝レオといったキャラクターが描かれています。 館内がにぎやかになればと、展示しました。昔懐かしいおもちゃ、絵本、旧式のタイプライター、そろばんに戦時中の慰問袋、防火ずきん、消火弾まであって、見学に来られた大人の方が興味深げに手に取っておられます。

「街頭紙芝居」求めて上京

どんな紙芝居を、そろえているんでしょうか。

初めは図書館から借りたり、市販の「印刷紙芝居」を用いましたが、教育的な内容が多いんです。
2年目の頃、永田為春さんという街頭紙芝居師が、ご高齢ながら東京の江戸川区で現役で活動されていることを、インターネットで知ったんです。

深夜バスで上京し、ご自宅を訪問。お願いして、娯楽、活劇、時代物が中心の「街頭紙芝居」の原画をたくさん分けていただきました。子どもたちの喜ぶ顔を思い浮かべながら、両肩に重いバックを下げて、新幹線と近鉄電車で大急ぎで帰宅。夕方4時には、いつものように公園に立っていました。

紙芝居は、1回に語る10枚前後の束を「1巻」と呼びます。印刷紙芝居や街頭紙芝居に、知人に描いてもらったものを含めると、400巻以上はありますね。自宅の2階は紙芝居が山積みです。

「対話」の楽しみ、伝えたい

紙芝居の魅力とは、なんでしょうか

紙芝居は、3巻を語って約10分間です。『ジャングルボーイ』のような冒険活劇や『さよなら先生』のような学園ものも一生懸命見てくれますが、『お山の金ちゃん』など主人公のいたずらぶりで笑わせる楽しいものに人気があります。

あめけん裏 あめけん次は、紙芝居クイズが約15分間。答えが分った子どもたちは「はい!はい!」と我先に手を挙げ、盛り上がります。クイズで正解した子どもには、おやつの無料交換券(「あめけん」)を渡します。クイズが終わると、子どもたちを一列に並ばせて、一人一人の注文を聞きながら水あめやタコセンなどの駄菓子を売ります。値段は1個50円です。

「待つ」「見る」「群れる」「買う」「食べる」。5つの楽しみが、紙芝居にはあります。幼稚園児から6年生くらいまで。年齢の異なる子どもたちが、同じ空間で、一緒に遊んで時間を過ごす。そんな体験が今は全く不足しています。

テレビもゲームも一方通行で、対話がありません。クイズや駄菓子を売りながら、「この漢字は、もう習ったのかな」「運動会は、いつあるの」。話し掛けると、どの子も笑顔で返答してくれます。 対話の楽しさを伝えるのが紙芝居だと、私は思っているんです。

たかっちゃんが、子どもたちに期待することは。

人の目を見て、大きな声であいさつする。夢に向かって、努力する。この2つが大切だよと、よく話しているんです。幼い頃に私の紙芝居を見てくれて、中学生や高校生に成長した子どもは、道で出会ったら、必ずあいさつしてくれます。大きな声で、「たかっちゃん、ありがとう」と。

(了)

◇塚田高司(つかだ・たかし)さん◇
1951(昭和26)年10月29日生まれ。
一心堂は京都府木津川市木津町西垣外23番地。
URLはhttp://isshindo.shopnews.jp
電話は0774-72-1111

紙芝居コレクション(デジタル資料集)

紙芝居たかっちゃんが所有し、演じている紙芝居のほとんどは東京都江戸川区の街頭紙芝居師、永田為春(ながたためはる)さん※の元に何度も通って購入した「昭和の街頭紙芝居」です。裏書きに永田さんの印があるのはそのためです。 永田さんから受け取った紙芝居は毎回、かなりの重量になります。たかっちゃんはそれを両手に持ち、さらに背中にも背負って、東京から木津の自宅に持ち帰りました。そして持ち帰ったその日も公園で紙芝居を演じました。子どもたちが待っているからです。

このサイトでは、たかっちゃんが所有しているそうした「街頭紙芝居」のいくつかをご紹介します。

※本サイトに掲載した紙芝居のなかで、作者ご本人および著作権継承者の方は、お手数ですがけいはんな小さな博物館 事務局までご連絡くださいますようお願い申し上げます。
けいはんな小さな博物館 事務局:hello@keihanna-smallmuseum.site

※永田為春(ながたためはる)さん
昭和3年生まれ。製本屋、旅芸人など様々な職を経て、駄菓子の卸業をしていた時に友人の紙芝居屋から誘われたのをきっかけに昭和28年頃から紙芝居屋となる。一時、別の仕事に就くが、40年に再び紙芝居屋になり、50年頃には自宅を駄菓子屋にした。現在でも後進の育成も兼ねて、ときどき街頭で紙芝居を上演している。(『紙芝居の世界』(監修・昭和館 発行・メディアパル)より)

クリックすると紙芝居のデータが見られます。(五十音順)

(※1)自由社:東京都荒川区にあった紙芝居の絵元・貸元
(※2)共同紙芝居:東京都葛飾区にあった紙芝居の絵元・貸元
(※3)冨士会:大阪にあった紙芝居の絵元・貸元
(※4)黒潮童話画劇合資会社:名古屋にあった紙芝居の絵元・貸元

一心堂子供博物館

文房具も扱っておられた「一心堂」さん。ご自宅の一室を「子供博物館」として開放しておられます。往年のキャラクターグッズがいっぱいです。

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